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追悼:ジニー・グリーン〜生粋の南部娘

ジニー・グリーンが亡くなってしまった。近年はずっと病気
を患っていたらしいが、とうとう力尽きてしまった。僕がま
ず最初に彼女の名前を意識したのはボズ・スキャッグスのメ
ジャー・デビュー作(69年)でドナ・ゴドショウらとバック
・コーラスを担当していたからだった。ゲイトフォールドの
ジャケットを開くとマスル・ショールズのAチームやデュエ
イン・オールマンらとともに彼女らの写真があった。同じ頃
にはエルヴィス・プレスリーの名作『イン・メンフィス』に
も参加していた。そんなジニーが頭角を現したのは、何とい
ってもアラバマ・ステイト・トゥルーパーズのフィーチャリ
ング・ヴォーカリストとして登用されたからだろう。このR
&Bレヴュー・バンドは何でもエレクトラ・レーベルがドン
・ニックスのセカンド・アルバム『LIVING BY THE DAYS』
をプロモートするために結成されたそうだが、戦前ブルース
の巨人ファーリー・ルイスを広くロック・ファンに知らしめ
る役割も果たした。そのバンドのツアーの模様を収録した2
枚組のライブで、ジニーはティッピー・アームストロング作
の「JOA-BIM」に全身全霊のゴスペル・フィールを込めてい
た。

そんなジニーがエレクトラからようやくソロ・デビューした
記念碑が『Mary Called Jeanie Greene』(71年)である。
アラバマ・ステイト・トゥルーパーズで交流したドン・ニッ
クスがプロデュース役に収まったのはごく自然な流れだった。
前述した「JOA-BIM」のスタジオ録音版をはじめ、アルバー
ト・キングが傑作『LOVE JOY』の最後に収録していたニッ
クス=ダン・ペン作「Like A Road Leading Home」やドニ
ー・フリッツとアーサー・アレクサンダーが共作しアレクサ
ンダーが72年のワーナー盤で発表した「Thank God He Ca
me」などを収録した到底忘れられない名作だ。ニックスにし
ては珍しくシャッフル・ビートで跳ねる「Only The Childre
n Know」で可憐な表情を見せるジニーも大好きだった。ミシ
シッピー州に生まれ、10代の頃にはチェット・アトキンスに
見出され、メンフィスのサン・レコードに吹き込む機会もあ
ったとか。そんなジニーは生粋の南部娘だったに違いない。
残念ながらソロ・アルバムはこのエレクトラ盤のみというキャ
リアに終わってしまったが、彼女のような脇役がいたからこ
そ、70年代にゴスペル・ロックのシーンが豊かに育まれたこ
とを忘れたくない。まるで草原を笑顔で駆け抜けるような「
Only The Children Know」を聞いていると、失ってしまっ
たものの大きさに初めて気が付く。


追悼:ジニー・グリーン〜生粋の南部娘_e0199046_18245281.jpg

by obinborn | 2018-08-21 18:26 | one day i walk | Comments(0)  

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