人気ブログランキング | 話題のタグを見る

中村とうよう氏の『地球のでこぼこ』を読み返す

今日は中村とうようの『地球のでこぼこ〜とうようズ・
バラード』(話の特集/78年)を読み返してみました。
彼が編集長だった『ニューミュージック・マガジン』の
名物コラム「とうようズ・トーク」を8年ぶん纏めたも
ので、年代ごとに回想録が付けられています。音楽に対
する真摯な姿勢だけでなく、社会問題にも鋭く切り込ん
だ氏ならではの辛口の批評は、今思えば社会主義に憧れ、
キューバにまでサトウキビ畑刈りの労働に出向いた青年
の闘争日記のようでもあり、いささか古色蒼然とした印
象は否めません。しかしながら、70年代になるにつれて
ロックが商業主義に取り込まれていった様を誰よりも早
く見抜き告発したのはようようさんに他なりませんでし
たし、本書でもそんなロックに代わって第三世界のサン
バやサルサ音楽に活力を見出していった氏の足跡が感じ
られます。時代の背景としてはナイジェリアの惨状から
ウォーターゲイト事件によるニクソン政権の失脚、オイ
ルショック、成田闘争までといったところでしょうか。
レーニンの独裁に失望したとうようさんが毛沢東の文化
大革命にはまだ希望を抱いていたことも明かされていま
す。恐らく今の若い世代には「何言っているんだ、この
オッサン!」としか受け止められないと思いますが、彼
のそうした姿というのは当時の進歩的文化人の標準だっ
たことは覚えておきたいですね。自分の場合は最も多感
だった高校生の時に『マガジン』を読み始めたので、と
うようさんの左翼的なメンタリティに影響を受け、また
そこから抜け出すまでには膨大な時間を要しましたが、
政治や社会に対して「これはおかしい!」と感じたら
率直に意見する態度だけは今も失いたくないです。


中村とうよう氏の『地球のでこぼこ』を読み返す_e0199046_17391759.jpg



by obinborn | 2019-03-09 17:41 | one day i walk | Comments(0)  

<< 追悼:ハル・ブレイン 映画『半世界』を観て >>