★不定期連載:USロック名盤その1『American Beauty』★
★不定期連載U.Sロック名盤その1『American Beauty』★
最初にジェリー・ガルシアを知ったのはCSN&YがTeach Your
Childrenで彼の弾くペダルスティールをフィーチャーしていた
からでした。長髪に丸メガネといったガルシアの風貌は田舎の
中学生を畏怖させるに十分でしたが、実際にグレイトフル・デ
ッドのLPを手にしたのは大学に入ってからで、ワーナーの廉価
盤1500円シリーズ(今でいう名盤探検隊の走り)で『ワーキン
グマンズ・デッド』が始まりでした。それ以来紆余曲折を経て
彼らにハマり、一時はDick's Picksのライブ音源なども聞きま
くり、長尺ジャムに真価を発揮するデッドにぶっ飛んだ(ドラッ
グにあらず)のですが、いざ楽曲単位で「いい歌」を探すとな
るとやはり70年の『アメリカン・ビューティ』に辿り着きます。
殆ど対の関係と言ってもいい『ワーキングズ〜』や内省的な『
Wake Of The Flood』も大好きなのですが、ガルシア=ハンタ
ーのソングライター・コンビによる繊細さが際立っているとい
う点では『アメリカン・ビューティ』が最高傑作ではないでし
ょうか。アルバム冒頭曲Box Of Rainの雨が窓辺を叩く詩情から
B面最後のロード・ソングTruckin'まで、今も飽きずに約40分
があっという間に過ぎていきます。その旅のなかにはクリス・
スミザーがカバーしたFriend of the Devilもあれば、まだ存命
だったピッグペンがリード・ボーカルを取る朴訥としたOpera
torもあり、さらには4声のコーラスが鮮烈なAttics of My Life
が深く心に刻まれるといった具合で、さながら彼らと一緒にト
ラックに乗り、アメリカ各地を旅しているような気持ちになれ
るのです。実際Truckin'にはヒューストン、ニューオーリンズ、
シカゴ、ニューヨーク、ダラス、アリゾナ...といった地名が出て
きますからね。約四半世紀に及んだデッドの歴史を振り返ると、
自由を掲げてきた彼らも、70年代後半は自主レーベルが挫折し、
新興のメジャー会社アリスタに身売りし商業主義と妥協するなど、 苦々しい局面を示し始め、時代に翻弄されていきます。そうやっ
て困難を抱えていく姿は何もデッドだけの問題ではなく、他なら
ぬ私たち自身が直面したイシューでした。そんな大人の痛みを知
った今だからこそ、この『American Beauty』が描きだす気ま
まな肖像、若き日の友情、車のエンジンの匂い...などが一層胸に
迫ります。Candy Manでジェリー・ガルシアが沈痛な歌を聴か
せれるかと思えば、ボブ・ウェアはSugar Magnoliaでガルシア
を励ますように陽気な歌を歌う。そんな静と動の一つ一つが、
同じバンドのなかで共存していた。フロントのヴォーカルを分か
ち合っていた。その価値を知ることはちょっと言葉にならないほ
どの体験でした。
by obinborn | 2019-05-08 18:07 | one day i walk | Comments(0)