1975年の回想
あれは確か高校二年くらいの頃だったと思う。所沢の田舎者だった
僕は、クラスの友達を誘って新宿まで遊びに行った。ちょうど西武
新宿駅に新しいビルが出来た時で、その近くの通りは西海岸を真似
してブールヴァードなんて名付けてられたっけ。果たして新宿まで
映画を観に行ったのか、レコード屋や楽器店に出向いたのかは今で
はもう定かではない。それでも帰りの西武新宿線で友人が持ち込ん
だトランジスタ・ラジオからイーグルスのTake It To The Limitが
流れてきたことははっきり思いだすことが出来る。それは偶然にも
日が暮れる時で、電車の窓から見える夕陽と、ランディ・マイズナ
ーが歌う希望の歌がしっかりと重なり合ったのだった。その時は一
緒にいた友達との関係がずっと続くものだと信じていた。しかし多
くのスクールメイトたちがそうであるように、時の流れとともに、
互いの環境が変化し、やがて疎遠になっていった。その時の彼と
偶然にも再会したのは数年後のことだった。互いにぎこちない挨拶
を交わし、幾つかの言葉を交わした。でもそこまでだった。別にど
ちらが悪いという訳でもないのに、気まずい沈黙が続いた。やっと
自分から出てきた台詞はまるで大人の社交辞令のようで、そのこと
に僕はぞっとした。その場から早く逃れる言い訳に過ぎないと自分で
も思った。若さとは残酷だ。互いがかつて親密であったならあった
ほど、結末はぎこちなく苦しいものへとすり替わっていく。あの75
年の夏から長い歳月が通り過ぎていった。
by obinborn | 2019-07-15 18:57 | one day i walk | Comments(0)