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鈴木博文『九番目の夢』

☆影響を受けた書籍:『鈴木博文/九番目の夢』(新宿書房1991年)ムーンライダーズのロック詩人、鈴木博文氏のエッセイ集第二弾で、彼がこれまで各媒体に書いてきた音楽・映画・小説などに関する文章をまとめる他、彼自身による幾編かの詩も寄せられている。その文体は初めてロックに出会った時の少年のように瑞々しく、知識や情報よりも自分の心にどう響いたかを優先させている。偉大なる博文さんと比べるのは憚れるのだが、僕もよく「青臭いことばかり書いているんじゃねえよ」とか「お前の私的な想いなど要らない」などと文句を言われる。しかしながら、音楽にとって最も大事なことは聞き手に何が残ったのかを自分史のように振り返りながら言葉へと結晶させていく作業だと思う。この『九番目の夢』の中ではとりわけ中学時代に聞いたジェリー・ガルシアのギターに虹を見たという記述や、「クラウス・ブアーマンは譜面が読めないんだぜ」と自慢気に言い触らした日本人アレンジャーへの疑問などが秀逸。特に後者はブアマンと同じベース奏者でもある筆者ならではの考察が生きていて「ブアーマンはきっと”俺のことを信用していないな”と感じたに違いない」とアレンジャーをチクリと刺しているほどだ。ちなみに本のタイトルは勿論ジョン・レノンの#9 Dreamからインスパイアされている。音楽好きであれば誰のなかにも眠っている柔らかく壊れやすい感情の襞があるだろう。本書はそれを優しく鮮やかに紐解いてくれる。

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by obinborn | 2020-05-14 17:06 | one day i walk | Comments(1)  

Commented by p-90 at 2020-05-16 20:18 x
探して読んでみますね、興味があります(手に入るかなぁ)
僕は、この曲のガルシアのペダルに虹を感じてました

New Riders of the Purple Sage - All I Ever Wanted
https://www.youtube.com/watch?v=j7CpQgOLrbA

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