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追悼:B.J.トーマス

確かな声量を持ち、明晰な発声で歌うシンガー。それがB.J.トーマスだった。何と言っても素晴らしいのは「泣きたいほどの寂しさだ」や「ママ」をヒットさせていた60年代中盤で、マーク・ジェイムズやチップス・モーマンとの相性が抜群の「フックド・オン・フィーリング」や「サスピシャス・マインド」も俄然光っていた。そしてバカラックーデビッド作の「雨に濡れても」とマンーウェイル作の「ロックン・ロール・ララバイ」がB.J.の名声を決定付けた。後者はデュアン・エディのトワング・ギターも印象的だった。
70年代に入ってからはシンガー・ソングライターのブームを意識してか、『ビリー・ジョー』や『ソングス』といった親しく語り掛けるような名作アルバムを作った。『ソングス』に収録されているジェリー・ゴフィンの「ダウン・イン・ザ・ストリート」やバリー・マンの「トゥー・メニー・マンディズ」を作者版と聞き比べた日々が懐かしく思い出される。
そんなB.J.が肺がんで亡くなってしまった。享年78歳。やたらにファルセットを多用してわざとらしい"泣かせ"に掛かる昨今のJ.ポップ歌手に苛立ちを感じるのは、きっと僕がエルヴィスやB.J.といった本格派のシンガーに親しんだ最後の世代だからだろう。奇しくも二人はアメリカ南部の出身であり、彼らの歌から鮮やかに立ち上がってくる土地の匂いや太陽の温もりが大好きだった。巨星堕つ。B.J.のようなスケールの大きいシンガーはもう二度と現れないだろう。

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by obinborn | 2021-05-30 16:07 | one day i walk | Comments(0)  

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