音楽と記憶はセットになっているとよく言われる。自分も町の有線でたまたま流れてきた曲から、それを買ったレコード店を思い出すことがある。無論すべてを覚えている訳ではないのだが、幾つかは今もリアルに記憶が蘇ってきて呆然としてしまう。何か特別な日であればより強く心に刻まれるのだろうが、私の場合はむしろ変わり映えのしない何でもない日が突然フラッシュバックするのだ。
先日は21歳の頃地元のレコード店で買った「セーラ」だった。当時のフリートウッド・マックはミリオンセラーを更新するマンモス・グループだったから、恐らくまずラジオで聴いて気に入り、それでシングル盤を買いに出掛けたのだろう。チャート・リアクションは79年の12月に全米第7位。
そう言えば私が「セーラ」を買いに自転車を走らせたのも寒い冬の日だった。そう、風は強く午後になると太陽がすぐに隠れてしまうような。だからどうしたのだと問われれば窮してしまう。ただ、そのシングル盤を買ったレコード店も、漕いだ自転車も、帰りを待っていた両親も、今はもう存在しない。