普段は殆ど意識することないグラミー・アワードだが、ボニー・レイットの受賞には心温まるものを感じずにはいられなかった。まず70歳を越えたシンガーでも未来への可能性があること。これはポップ音楽が10代向けにマーケティングされている日本とアメリカとの文化の差だろう。
次は滅多に自作曲を書かない(どちらかと言えば他人の曲の解釈に価値を見出してきた)レイットが、Just Like Thatというフォーキーなオリジナル曲で意外にも最優秀楽曲賞に選ばれる名誉を得たことが挙げられよう。とくに今回は臓器移植というシリアスなテーマを、脳死した息子を見守る母親の立場からソングライティングしたことが共感を呼んだ。
受賞時のレイットの様子や楽曲のニュアンスはそれぞれyou-tuで確認して頂きたいが、腐りまくったショウビズの象徴とも言えるグラミー・アワードであっても、このような審美眼があることに私は嬉しくなった。