2018年 03月 07日 ( 1 )

 

『シンガー・ソングライター名盤700枚』を振り返って学んだ教訓について

先日Tさんとお会いした時に差し出されたのが『シンガー・
ソングライター名盤700』だった。何でもこのムックでぼ
くの名前を覚えてくださったそうで、本当に人によって自
分との接点は様々なことを改めて実感させられた。音楽之
友社からこの書籍が出たのは確か2000年の夏だったと記憶
している。あれからもう18年近くの歳月が経ってしまった
が、懐かしくいろいろなことが思い出される。編集を担当
されたのは当時まだ音友に在籍されていたUさんで、彼とは
企画段階からアイディアを交換し合った。とにかくぼくたち
が目標にしたのは何らかの基準と成り得る最高のディスク・
ガイドを作ろう、それもいわゆるロックの名盤選ではなく、
SSWにテーマを限定して行うというハードルの高さがあっ
た。しかし得意な分野だけに選盤や執筆の作業はことの他
楽しかった。とくに自負したいのは同じSSWといっても、
英米あるいはカナダやアイルランドといった国によってテ
イストは異なるので、それぞれのチャプターを設けて意図
を明確にしたことだろう。またアメリカという広いネイショ
ンに関しては西海岸と東海岸と南部とでは微妙に肌合いや
持ち味が違うため個々に章立てした。さらに50年代から活躍
してきたニューヨークのティン・パン・アレイ系を別枠にし
たり、新しい時代を担う新進のSSWたちのコーナーも用意し、
それらは概ね好評をもって迎えられた。

ところがある雑誌に載ったこのムックへの書評は醜かった。
細かい部分はもう忘れてしまったが、デヴィッド・ボウイも
自作自演の歌手なのにそれすら載っていない、そんな趣旨だ
った。そりゃそうでしょう。ボウイだって立派なソングライ
ターであり、個人的には敬意も払っている。でもぼくたちが
目指したのはある種のルーツ志向を匂わせるフォーキーであ
り、そんな地味な分野の人たちをまとめて紹介したいという
気持ちだったから、両者が噛み合うはずはないですよね(笑)
そのレビューの筆者がライターだったことがまた事態を悪化
させた。Uさんとはお酒の席で「同じような音楽が好きなの
に、たまたま執筆者に選ばれなかっただけでこんな言い掛か
りをしたのだろうか?」などと疑念について語り合った。

そのことからぼくは私怨をレビューに持ち込んではいけない
という教訓を学んだ。ぼくを含めて、人々は時に賢くあるけ
れど、多くの場合は流されやすい。ぼくらが日頃から慣れ親
しんでいるSNSの世界でさえ、多くの人は自分の詳しい分野
に関してはとかく知識を披瀝したがるけれど、疎い部分につ
いては黙ったきりだもん。ぼくが音楽業界から意識的に距離
を置こうと真剣に考え始めたのは、思えばこの頃からだった。


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by obinborn | 2018-03-07 13:08 | blues with me | Comments(0)