2018年 05月 28日 ( 1 )

 

映画『I AM THE BLUES』を観て

28日は新宿のK'sシネマにて、ダニエル・クロス監督のドキュ
メンタリー映画『I AM THE BLUES』を鑑賞した。昨年公開
された『約束の地〜TAKE ME TO THE RIVER』がソウル音楽
の伝承をテーマとしていたのに対し、今回はブルースそれもル
イジアナ・バイユー一帯に生息するかなりマイナーな音楽家た
ちに焦点を絞るという超マニアックぶりだ。また『約束の地』
が辛うじて未来への架け橋を物語っていたのに対し、本作はど
こまでもダークな死生観を描いているのが対照的。アフリカン
=アメリカンの終着駅としてブルーズを着地させるというイン
テリ的な視点ではなく、アメリカ深南部の日常、つまりクロウ
フィッシュ釣りや、どこまでも続く綿畑、あるいは各地に点在
するジューク・ジョイントやチトリン・サーキットを生活の糧
とするワンナイト・スタンドのブルースマン達を、クロス監督
は生々しく、しかし抑制されたタッチで鮮やかに描き出す。

基本的には今も現役で活躍するボビー・ラッシュを語り部に据
えながらおよそ120分が進行してゆく。今宵のショウのギャラ
ンティに納得しないラッシュを見兼ねたエージェンシーが「今
からATMで全部下ろしてくるよ」と渋々了解するひとコマから、
レイジー・レスターのハーモニカの息遣い、バーバラ・リンが
奏でる左利きギターの高揚(SO GOODに、YOU'LL LOSE A
GOODTHING)まで臨場感がたっぷり。小ネタでいえばエク
セロ・レーベルの知られざるシングル盤が男女の邂逅の伏線と
なっていたり、サニー・ボーイの”乞食ジャケット”が写し出され
たり、ロバート・ウィルキンスの「放蕩息子〜Prodical Son」
が、毎日の生活のなかごく自然にセッションされていたりと、
見所は多数あり。

どうしても私たち日本人はブルーズに対して音楽のスタイルと
して入門してしまう。しかし、それらとは全く異なる暮らしが

ブルーズの生命線だ。思えばラッシュにせよ、レスターにせよ、
リンにせよ、21世紀まで生き残ったブルーズ音楽の生き証人だ。
また、映画が撮影されている間に亡くなってしまったバド・ス
パイアーズもいる。いわばこの映画『I AM THE BLUES』は、
滅びゆくブルーズ音楽に思いを込めた置き手紙なのだと思った。

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by obinborn | 2018-05-28 18:12 | blues with me | Comments(0)