2018年 06月 21日 ( 1 )

 

『ペット・サウンズ』再び

鹿と戯れるこのジャケットをパロディにしたアイドル・
グループの作品を見かけたことがある。念には念をとい
うことだろうか、アーティストとタイトルの文字フォン
トまで精巧に似せたそれを眺めながら、『ペット・サウ
ンズ』が発売された1966年から随分と時間が経ってし
まったことを知らされた。

あまりに語られ過ぎたアルバムであり、そこに付記すべ
きことはもう殆ど残されていない気がする。しかし、彼
らも当時はいわゆるアイドル・グループだったことを覚
えておきたい。ジャケットを裏返すと侍に扮したメンバ
ーの写真が目に入ってくる。こうした無自覚さと実際の
音楽との落差にビーチ・ボーイズ、つまりリーダーであ
ったブライアン・ウィルソンが置かれていた当時の混沌
とした状況を伺い知ることができる。

音楽自体がロック・バンドのフォーマットを離れ、オー
ケストレーションを用いたシンフォニックな響きを重視
している。ニール・ヤングが脚本を手掛けた映画『過去
への旅路』に使用されたLet's Go Away For Awhileなど
最たるもので、歌詞に邪魔されないインストゥルメンタ
ルの作品だけに、かえって抽象的な美しさを増した。

ニール・ヤングといえば、彼がスティルス・ヤング・バ
ンド時代に作ったLong May You Runには、ブライアン
の独白とも言うべきCaloline Noのフレーズが挟まれてい
た。旧友であり同じバンド・メイトだったスティーヴン・
スティルスに向けて、ニールは「きみも長い時間を駈け
抜けてきたんだね」と語り掛け、労わりの感情を表す。
そこに被さってくるのが、まさにCaloline Noのメロディ
であり、かつては犬猿の仲と噂されたニールとスティー
ヴンの溝を埋めるかのようなドラマを想像させた。

何やら『ペット・サウンズ』本体というよりは余談が中
心になってしまったが、上記のような物語を恐らく聞き
手の数だけ生み出したという点でも、時間という試練を
乗り越えた素晴らしいアルバムだと思う。

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by obinborn | 2018-06-21 04:07 | one day i walk | Comments(0)