2018年 09月 02日 ( 1 )

 

服部高好著『最後の切り札〜米国ルーツ音楽再訪』を読んで

『アンシーン・アンド・アンノウン〜アンサング・ヒーロー
達から聴こえる米国ルーツ音楽』に続く、服部高好氏の著作
が届いた。前回も渋い音楽家ばかり取り上げられていたが、
今回もカンザス・シティ・ジャズのジェシ・ストーンやルイ
ジアナ・バイユーのリロイ・ワシントンといった、日本では殆
ど語られることのないミュージシャンに光が当てられている。

服部氏の評論スタイルはごくオーソドックスなもので、対象
となる音楽家の史実をまずはきちんとリサーチし、その楽曲
のカバーや関連ミュージシャンを通して理解を深めていく方
法を取る。文章はごく平易な筆致だが、これだけ深く掘り下
げる人も珍しい。わずか4人の音楽家にA4サイズ370項を
費やし、膨大な注釈とコラムで本文を補完するという徹底ぶ
り。その情熱に瞠目するプロの音楽評論家もいるだろう。

とりわけイアン・マクレガンとビル・カーチェンの章はルー
ツ・ロック愛好家の共感を呼びそうだ。彼らが青年期に影響
を受けた楽曲や人脈から興味を広げ、文字に落とし込んでい
く様には、思わぬパーツからミッシング・リングが完成して
いくような喜びが伝わってくる。奇しくもマクレガンとカー
チェンの場合、英米を跨ぎながら活動していったキャリアの
持ち主だけに興味が尽きない。

今回の著作には『最後の切り札〜米国ルーツ音楽再訪』とい
うタイトルが冠されている。とかく沈滞気味の音楽ジャーナ
リズムだが、悪しき状況を一喝する”最後の切り札"(An Ace
In The Hole)になって欲しい。そんな愛すべき私家版だ。

e0199046_09274070.jpg

[PR]

by obinborn | 2018-09-02 09:30 | Comments(0)