カテゴリ:one day i walk( 898 )

 

『ペット・サウンズ』再び

鹿と戯れるこのジャケットをパロディにしたアイドル・
グループの作品を見かけたことがある。念には念をとい
うことだろうか、アーティストとタイトルの文字フォン
トまで精巧に似せたそれを眺めながら、『ペット・サウ
ンズ』が発売された1966年から随分と時間が経ってし
まったことを知らされた。

あまりに語られ過ぎたアルバムであり、そこに付記すべ
きことはもう殆ど残されていない気がする。しかし、彼
らも当時はいわゆるアイドル・グループだったことを覚
えておきたい。ジャケットを裏返すと侍に扮したメンバ
ーの写真が目に入ってくる。こうした無自覚さと実際の
音楽との落差にビーチ・ボーイズ、つまりリーダーであ
ったブライアン・ウィルソンが置かれていた当時の混沌
とした状況を伺い知ることができる。

音楽自体がロック・バンドのフォーマットを離れ、オー
ケストレーションを用いたシンフォニックな響きを重視
している。ニール・ヤングが脚本を手掛けた映画『過去
への旅路』に使用されたLet's Go Away For Awhileなど
最たるもので、歌詞に邪魔されないインストゥルメンタ
ルの作品だけに、かえって抽象的な美しさを増した。

ニール・ヤングといえば、彼がスティルス・ヤング・バ
ンド時代に作ったLong May You Runには、ブライアン
の独白とも言うべきCaloline Noのフレーズが挟まれてい
た。旧友であり同じバンド・メイトだったスティーヴン・
スティルスに向けて、ニールは「きみも長い時間を駈け
抜けてきたんだね」と語り掛け、労わりの感情を表す。
そこに被さってくるのが、まさにCaloline Noのメロディ
であり、かつては犬猿の仲と噂されたニールとスティー
ヴンの溝を埋めるかのようなドラマを想像させた。

何やら『ペット・サウンズ』本体というよりは余談が中
心になってしまったが、上記のような物語を恐らく聞き
手の数だけ生み出したという点でも、時間という試練を
乗り越えた素晴らしいアルバムだと思う。

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by obinborn | 2018-06-21 04:07 | one day i walk | Comments(0)  

6月10日はロッキン・アフタヌーンでした!

今日はロッキン・アフタヌーンのギグ&DJでした。
ロス・ロイヤル・フレイムズ、ザディコキックス、
ザ・ハート・フロム・ア・スタングのバンドの皆さん、
二見潤さん、knittersさんのレコード・セレクター、
そして何よりも来てくださった方々、主催されたHさん、
ありがとうございました!私は30分ほど回させて頂き
ました。以下プレイリストです。

*    *    *

James Brown&theFamous Flames/Night Train
The Carter Brothers/Southern Country Boy
Spencer Bohren/Straight Eight
Electric Bluebirds/Alligator Man
Dave Edmunds/Louisiana Man
Charles Man/Walk of Life
Gary U.S Bonds/Jole Blon
Steve Jordan/Why Can't Be A Friends?
Clifton Chenier/Bon Ton Roulet
Fats Domino/Be My Guest
Fats Domino/I'm Gonna Be a Wheel Someday


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by obinborn | 2018-06-10 22:14 | one day i walk | Comments(0)  

トランプ政権時代のブルーズ〜ライ・クーダー『放蕩息子』を聞いて

ライ・クーダーの新作『The Prodigal Son〜放蕩息子』
が素晴らし過ぎます。2012年の前作『Election Special
〜選挙特報』は力感漲るアルバムだったけど、今回も予想
を大きく上回る出来栄え。個人的にはまるで前作と地続き
のような逞しい印象を受けました。すなわち労働者や非正
規雇用者(私なんか日雇いワーカーですよw)など社会的に
弱い立場の人間の側に立ち、初期を思わせるシンプルなブ
ルーズ、ゴスペル表現のなかでテーマを際立たせています。

60年代にスタジオ・ギタリストとして多くのセッションを
こなし、70年にソロ・デビューしてからは実り豊かな時代
を過ごし、80年代には映画音楽へと視野を広げた。90年代
にはブエナ・ベスタに象徴されるようなワールド・ミュージ
ックとの接点を持ち、以降はややコンセプトを優先させたア
ルバムを紡いだ。今までのライの歩みをざっくり振り返って
みると、そんな印象を受けますよね。

無理な音楽的越境がないことが『放蕩息子』の生命線ではな
いでしょうか?ヴォーカルにしてもギターにしてもごく自然
体であり、未知の音楽に誘ってやろうという”さもしさ”より、
プリミティブな社会的な動機が音楽の大きな背骨になってい
ます。

もともとライは30年代や40年代の不況時代に歌われたブルー
ズやフォークに共感を寄せた人でした。たとえ自分の印税に
結びつかなくとも、そのような古く埋れた曲をメジャー・フィ
ールドで展開したところが画期的でした。そのことを振り返っ
てみると、今回の『放蕩息子』で彼が再び原点に立ち戻ろう
とした姿勢が、ごく自然な回帰に思えてなりません。

恐らく『放蕩息子』はトランプ政権時代に生まれた鬼っ子的
なブルーズなのでしょう。「神様とウディ・ガスリー」には
こんな歌詞が出てきます「ねえ、ガスリーのTHIS LAND IS
YOUR LANDを歌っておくれ。やがて専制君主は失脚するだ
ろうね。ガスリーさん、あなたは夢見る人だった。そして私
もまたこの社会を良くしようとしているドリーマーなんです」

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by obinborn | 2018-06-04 20:06 | one day i walk | Comments(0)  

4月27日のサーディンヘッド

音の粒子が降り注ぐ夜だった。そのひとつひとつが繊細であり、
骨太であり、山あり谷ありの楽曲のなかで一枚の大きな絵を描
き出す。そんなサーディンヘッドのライブを27日は下北沢のrp
mにて。複雑な構成を伴った変拍子の嵐もあれば、綺麗なメロ
ディが浮かび上がってくる場面もある。そんな変幻自在のサウ
ンドスケープに時の経つのを忘れた。

誰もいない放課後の教室で、一人ギターを抱えた青年がいる。
無口な彼は思うように言葉を発することが出来ない。そう、例
えば自分のこれまでのことや、これからのことに関して。それ
でも彼はギターを弾き出す。幾多のジーニアスたちの演奏に慄
きつつも、いつしか自分の語法を身に付けて。


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by obinborn | 2018-04-28 06:57 | one day i walk | Comments(0)  

リヴォン・ヘルム「もし自由を感じられたらどんなにいいことだろう」

6年前の今頃、再来日したデヴィッド・ブロムバーグはステージ
からこう呼び掛けた「リヴォンが亡くなったらしい...」と。そん
な断片をまるで昨日のことのように思い出している。そう、今日
はリヴォン・ヘルムの命日だった。彼にとって最後のスタジオ・
アルバムとなってしまった『ELECTRIC DIRT』(Vanguard 09
年)を聞いている。一曲めがガルシア=ハンター作のTennessee
Jedだったことが面白い。というのもリヴォンは最初デッドのよう
なヒッピー・ロックを毛嫌いしていたから。そんな彼はこう打ち
明けている「何だ、音楽の根っ子は俺らザ・バンドと一緒だったん
だね」と。そんなエピソードを反芻しながら、Tennessee Jed
が鳴り出し、以下ステイプル・シンガーズ、ハッピー&アーティ・
トラウム、マディ・ウォーターズ、カーター・ファミリー、ランデ
ィ・ニューマンと連なっていくカバー曲が、計らずともリヴォンの
広範な音楽地図を物語っていく。アルバムの最後に置かれたのは、
ニーナ・シモンの名唱で知られるI Wish I Knew How It Would
Feel To Be Freeだ。かつては公民権運動を背景にして歌われた
「もし私が自由を感じることが出来たらどんなに素敵かしら」と
いう歌詞が、時と場所を変えて、リヴォンの白鳥の歌になった。

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by obinborn | 2018-04-19 17:09 | one day i walk | Comments(0)  

サーディンヘッドの鰯釣りに行ってきました!

大きく真っ白なキャンバスがあって、そこに自由な絵を描いて
いく。一筆書きのような大胆な線があるかと思えば、水彩画の
ような繊細さに満ちたラインもある。そんなロック・カルテッ
ト、サーディンヘッドのライブを6日は下北沢のラウンにて。
そこにはブルーズの解体があり、ファンクの応用があり、とき
にジャズ・イディオムに向き合うフリーなインプロヴィゼーシ
ョンの応酬がある。緻密であると同時に自由奔放なサーディン
の”鰯釣り”はこの夜も実にフレッシュだった。

「鍵盤奏者がいない分、僕たちは和声に関して自由になれるの
かもしれません」一部と二部との間の休憩時間にベース奏者の
湯浅さんはそんなことを語ってくださった。僕は楽器を弾けな
いので音楽理論に関することはよく解らないけれども、彼が言
わんとすることが、壮大でイマジネイティブな音の束となって
降り注ぐ得難い夜になった。サーディン!君たちは何てイカし
ているのだろう!

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by obinborn | 2018-04-07 06:06 | one day i walk | Comments(0)  

長門芳郎氏の著作『パイドパイパー・デイズ〜私的音楽回想 1972-1989』を読んで

読んでいて妙に切なくなった。シュガー・ベイブのマネジャー
から輸入レコードショップの店主、あるいは海外アーティスト
の招聘まで活躍されてきた長門芳郎氏の回想録が『パイドパイ
パー・デイズ』(リットーミュージック 2016年)である。音
楽好きの青年が故郷を離れ上京し、やがてある種の洋楽の指南
役となっていく。そんな過程がご本人の飾らない文体で書き留
められている。サブ・タイトルに「私的音楽回想 1972-198
9」とあるように、長門氏と同時代を生きた人々が思いを重ね
ることは多々あるだろう。

ラヴィン・スプーンフルやローラ・ニーロに夢中になり、それ
をきっかけに業界に入った青年が、いつしか80年代に起こった
バブルの影響で地上げの問題に遭遇し、「パイド」があった南
青山の地から立ち退きを余儀なくされる。そんな過程のひとつ
ひとつを激動の昭和史と重ねても問題はあるまい。amazonに
代表されるネット販売に慣れている今時の若い方々には、かつ
てパイドやその他多数の輸入レコード店で交わされていた生き
生きとした情報交換や気取らないお茶話が新鮮に映るのかもし
れない。個人的にもパイドにはよく通った。午後の講義が終わ
ればパイドに行き、ドクター・ジョンの『ガンボ』やアラン・
トゥーサンの『サザン・ナイツ』を買った。吉祥寺の中道商店
街にあった芽瑠璃堂とともに、この2店はぼくにとってまさに
”スクール”に他ならなかった。閉店直前の89年にパイドで買っ
た最後のレコードは、ブライアン・ウィルソンの12インチ・
シングルLove and Mercyだったかな。

今や伝説的なショップとして語り継がれているパイド。初代の
経営者である岩永さんがかつて晶文社から出された書籍と本書
を併読していけば、70〜80年代の東京をより俯瞰出来るかもし
れない。


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by obinborn | 2018-02-11 19:20 | one day i walk | Comments(0)  

開封されなかったメール

以前僕が派遣切りに遭った時、殆ど唯一同情してくれたのがTさん
だった。他の多くの職員が「当たらず触らず」だったのに対して、
Tさんだけが直属の上司に理不尽さを訴えてくれたことが嬉しかっ
た。芯が強く正義感があり、見た目は少しパティ・スミスにも似
た女性で、彼女とだけは職場で不思議と気持ちが通じ合ったものだ
った。そんなTさんからのショートメイルを僕は何と二ヶ月半も気
が付かずに放ったらかしにしたままだった。もともとスマホの機能
に弱い自分をまさかこういう形で知るとは思わなかった。たまたま
妹からのメールがあり、それを遡ったことでTさんから連絡を頂い
た旨を今日やっと知るところとなった。

「お役に立てなくてごめんなさい。小尾さんのロッカーにビールを
入れておきました。少しですが飲んでください。私オビさんの分も
頑張りますから」それがTさんから届いたメールのおよその文面だった。        何と彼女は職場が思うように改善されなかったことを詫び、別れの
挨拶として置き土産までそっと忍ばせてくれていたのだった。その
職場に戻ることも、そこにあった自分のロッカーを開ける機会も、          もう永遠にやってこないだろう。それでもTさんの優しい心遣いに

思わず胸が熱くなった。

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by obinborn | 2018-02-05 13:32 | one day i walk | Comments(2)  

鷹の台のレコード店「ビュグラー」に行ってきました

今日は仕事が終わった後、鷹の台のレコード店「ビュグラー」
に行ってきました。昨年6月に開店したこのお店、以前から噂
だけはよく耳にしていたのですが、今回ようやく伺うことが
出来ました。武蔵野の面影が残り、近くに玉川上水がある小平
市は私の実家がある所沢にも隣接しているため、思わず親しみ
が湧いてきますが、そんなローカルな町に中古レコ・CD屋が
出来たなんて素晴らしいことです。しかも特に70年代のSSW
/スワンプ/トラッドの品揃えには力を入れているとのこと。こ
りゃ行かなきゃ罰が当たりますよね。

明るく広々とした店内にはよく整理されたLPやCDが並んでい
ますが、一枚一枚のプライスカードに的を得たコメントや盤質
が細かく記され、店主の愛情が滲み出ていました。少しだけお
話させて頂いたのですが、若い時分は何でも渋谷のブラックホ
ークに通われていたらしく、相当な音楽通だとお見受けしまし
た。ちなみに店名はラリー・マレイが書き、ザ・バーズ在籍時
のクラレンス・ホワイトが歌ったヴァージョンで一躍有名にな
ったBUGLER(アルバム『FARTHER ALONG』所収)から命
名されたとか。ぼくが真っ先にそのことを切り出すと、店主は
穏やかそうに笑ってくださいました。

あまりに安価だったので重複を知りつつジョン・ヘラルド、バ
リーマン、グリース・バンドを思わず購入したほか、収穫だっ
たのは今日生まれてから初めて現物を見たカナダのSSW、ウィ
リー・P・ベネットのセカンド・アルバムでした。以上4枚で
〆て6,600円!このリーズナブルなお値段もビュグラーの魅力
の一つでしょう。最後に「また来ます!」とご挨拶して、冬の
武蔵野を後にしました


e0199046_16491376.jpg😊


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by obinborn | 2018-01-15 16:50 | one day i walk | Comments(0)  

日高屋のラーメンにはもう飽きた

さすがに日高屋のラーメンには飽きてきた。あんなケミカルな
もん毎日食べていたら明らかに早死しますぜ。私は少々味覚オ
ンチで、親父が死ぬ前に家族で記念で入った鮨屋が外れだった
時も結構美味そうに食べていて、妹に思いっきり馬鹿にされた
ことがあるのだが、そんな私でも日高屋の麺が不味いことくら
い解る。かといっていわゆる美食家(グルメ)と呼ばれる連中
はもう生理的に鼻持ちならなく感じてしまうのだけれど。

ファッションと食べ物にうるさい男は大成できないとよく言わ
れる。ジェリー・ガルシアはあんな美しいギターを奏でながら
普段食べるものはジャンクフードばかりで、それが死期を早め
と言われる。ヴェートーベンもチャック・ベリーも私生活では
相当苦労し、試練の日々を過ごしたと言われる。そんな彼らか
ら素晴らしい、歴史に残る音楽が生まれた。その価値を考えて
みたい。


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by obinborn | 2018-01-09 17:30 | one day i walk | Comments(0)