カテゴリ:one day i walk( 892 )

 

江古田「おと虫」閉店に寄せて

かなりのショックである。江古田の老舗中古レコード/CD
店「おと虫」が11月いっぱいで閉店するらしい。今日久し
ぶりにお店へ伺ったところ、店主から直接その旨を聞いた。
僕が最初に同店を知ったのは開店したばかりの79年夏だっ
たと記憶する。始めの頃は中古盤と並行して輸入LPも扱う
お店であり、通っていた学校がたまたま江古田だったこと
もあり、午後の講義が終わるとほぼ毎日のように通い詰め
たっけ。おと虫で安く買ったキンクス『マスウェル』デッ
ド『ウェイク・オブ・ザ・フラッド』アーロ・ガスリー『
最後のブルックリン・カウボーイ』などを、まるで昨日の
ことのように思い起こす。なお今後は通販専門店として営
なまれるらしい。それでも店頭販売がなくなってしまう喪
失感は計り知れない。およそ38年間「おと虫」で売り買い
しなかった年は一度もなかった。今まで本当にありがとう
ございました。これでルイジアナ音楽専門店「クラン」と
ともに江古田の灯がまたひとつ消えた。


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by obinborn | 2017-10-25 18:41 | one day i walk | Comments(0)  

再訪:トラフィック『When The Eagle Flies』

マスル・ショールズの面々とのツアーを73年の4月に終えて
からのトラフィックは、まずスティーヴ・ウィンウッドがレ
ミ・カバカらとアイヤ・ケテなるプロジェクトを組み、アル
バム『THIRD WORLD』を7月にリリース。大胆にアフリカ
音楽にアプローチしたが、一般的にはそれほど認められるこ
となく終わってしまった。大いなる母船であるトラフィック
のほうは、ウィンウッド/キャパルディ/ウッド/リーボップと
いう71年春以降の基本フォーマットを維持しつつも、74年の
5月になるとリーボップが遂に脱退し、新たにロスコー・ジ           ー(b)が加わった。ジャマイカ出身のロスコーはそれまでも          ゴンザレスやココモといった英ソウル/ファンク・バンドに在
籍していたが、ウィンウッドの説得によっていよいよトラフィ
ックへと合流する。

そんな新体制で録音されたトラフィック最後のスタジオ・ア
ルバムが『WHEN THE EAGLE FLIES』(英ISLAND ILPS92
73)だ。これまでもデイヴ・メイソンやリック・グレッチに
よるベース演奏がなかったわけではないのだが、ウィンウッ
ド/キャパルディ/ウッドによる『JOHN BARLEYCORN MUST
DIE』の簡素(いい意味で不安定)なオルガン・トリオに比
べると、専任ベーシストを投入しただけにサウンドの輪郭は
随分はっきりとした。アルバムの冒頭を飾るSOMETHING N
EWを筆頭にしたメリハリのある突き抜けた演奏は、まさに
新生トラフィックの誕生を告げるかのよう。むろんウィンウ
ッド=キャパルディのソングライティング・コンビによる
湿性の宇宙は健在なのだが、そこに仄かな太陽が加わったよ
うな暖色とアメリカ南部の匂いを感じずにはいられない。

自由闊達なジャム演奏。ゆったりと漂うモーダルな音階。そ
うした二つのエレメントが交錯した本作でのトラフィックを
聞いていると、果たしてこれはロックなのかジャズなのか、
はたまた全く異次元の何かなのか、筆者は未だに戸惑ってし
まう。その混沌とした気持ちはけっしてネガティヴなもので
はなく、ロックというフォーマットから67年の4月に始まっ
たトラフィックが、これだけのフリーダムを獲得したことへ
の歓喜であり、驚嘆であった。未だ聞くたびに新たな発見が
ある『WHEN THE EAGLE FLIES』を前に音楽的な好奇心に
燃えるバンドやアーティストはきっと少なくないはずだ。そ
の素晴らしい果実をまえにぼくは今日も震えている。


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by obinborn | 2017-10-17 16:09 | one day i walk | Comments(0)  

9月22日の捕獲日誌〜下北沢フラッシュさん!

本日は大阪出張前祝いとして、下北フラッシュさんでLP3枚
シングル12枚を購入しました。同店に伺うのは7月2日以来
と二ヶ月半ぶりでしたが、カード満タンの特権を活かし全品
50%OFFといい買い物が出来ました。約90分徹底的に掘りま
くり、合計金額は6,318円!これから聴きまくるぞ〜😃
(LP's)
◎ALBION COUNTRY BAND/BATTLE OF THE FIELD(ISLAND)
◎MARTIN CARTHY WITH DAVE SWARBRICK/BYKER HILL
(FONTANA)
◎V.A/AIN'T THAT GOOD NEWS!(SPECIALTY)
 (7's)
◎ERIC BURDON&THE ANIMALS/San Francisco NIGHT(MGM)
◎LINDISFARNE/LADY ELEANOR(CHARISMA)
◎JERRY REED/SHE GOT THE GOLDMINE (RCA)
◎BOBBY BLAND/ASK ME 'BOUT NOTHING (DUKE)
◎CLARENCE CARTER/PATCHES(ATLANTIC)
◎SLY& THE FAMILY STONE/FAMILY AFFAIR(EPIC)
◎LITTLE MILTON/I'MLIVING OFF THE LOVE YOU GIVE(STAX)
◎JIMMY REED/DON'T LIGHT MY FIRE(BLUESWAY)
◎BOBBY POWELL/QUETION(WHIT)
◎MERRY CLAYTON/SUSPICIOUS MIND(ODE)
◎BARBARA LYNN/SECOND FIDDLE GIRL(JAMIE)
◎DON&DEWEY/KOKO JOE (SPECIALTY)

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by obinborn | 2017-09-22 18:42 | one day i walk | Comments(0)  

ロビン・トロワー『TWICE REMOVED FROM YESTARDAY』

ロビン・トロワーのファースト・アルバム『TWICE REMOVE
D FROM YESTERDAY』(Chrysalis CHR1039)を本日江古田
のココナツディスクで救出しました。念願のU.K.オリジナル盤
が地元の店でわずか900円(税抜)ですからね。笑いが止まり
ません。ご存知のようにトロワーは元々プロコル・ハルムのメ
ンバーだったのですが、ブルッカー=フィッシャー体制下では
存分にギターを弾くことが出来ず悩んでいました。そんな彼が
ハルムから脱退し、初めて自己名義のトリオを組んで発表した
のが73年の本作です。プロデュースがハルム時代の同僚フィッ
シャーであることに腐れ縁を感じずにはいられませんが、以前
フランキー・ミラーとジュードを組んでいたジェイムズ・デュ
ワーのソウルフルな喉と重いベース、ハミングバードのファー
ストでも叩いていたレッグ・イサドラのパワー・ドラムスを得
て、トロワーは水を得た魚の如く弾きまくっています。その世
界はやはり英国流の重厚長大なブルーズ・ロックで、思わずフ
リーやファミリーといった歴代の戦士たちを彷彿させます。
B.B.キング作のROCK ME BABY以外はデュワー=トロワーが
中心となったオリジナル曲ばかりで、I CAN'T WAIT MUCH
LONGERやDAYDREAMなど以降ライヴの場で定番となってい
く人気曲を収録しています。そんな意味でもトロワーの再出発
に相応しいマスターピースと言えるのではないでしょうか?
B面ラストのBALLERINAはまるでジミ・ヘンドリクスが憑依し
たかのような優しいバラードで、ヘンドリクスの最終作『CR
Y OF LOVE』の夢の続きを見ているかのよう。ストラトキャス
ターならではの繊細な音のかけら。それを骨太なロック・トリ
オで実践するチャレンジングな姿勢。ロビン・トロワーが奏で
るヴィヴラートやスクィーズのひとつひとつに今日もなお震え
る秋の夕暮れ時でした。

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by obinborn | 2017-09-19 16:54 | one day i walk | Comments(0)  

音楽雑誌と自分

そういえば近年の自分はあまり音楽雑誌を読まなくなって
しまった。恐らく今はもうある程度の知識を得てしまった
ので読む必要性を感じなくなってしまったことが主な要因
だろう。10〜20代の頃は何でも吸収しようと『ミュージッ
ク・ライフ』のようなミーハーなものから硬派の音楽批評
誌『ニューミュージック・マガジン』まで熱心に目を通し
ていた。30歳になって音楽出版業界にデビューしてからは、
他の同業者がどういうことを書いているのかが気になり、
この時期からは今までの読者目線とやや違う読み方になっ
ていった。ある日編集者から「レコード会社からサンプ
ル盤を貰ってウチの会社で紹介してるんですから、あまり
批評的なことは書かないでくださいね」と遠回しに言われ
たことがある。「真剣に批評する」のが中村とうよう氏か
ら学んだ最大のことだったので、僕の気持ちは萎えてしま
った。ただ、以前とうようさん自ら告白していたように、
広告主やレコ会社との付き合いは商業誌にとって生命線。
そういう関係がイヤならどうぞ勝手にミニコミでも作って            ください、というのは彼の偽らざる本音だっただろう。

このFBなりBLOGを読んでくださっている方々にとって、
今もそれなりに関心ある音楽雑誌というと『レコード・
コレクターズ』『ブルース&ソウル・レコーズ』『ギター
・マガジン』『CDジャーナル』くらいしか残っていない
のではないだろうか?この20年の間に『アドリブ』『
クロスビート』『The DIG』『ストレンジ・デイズ』『
ロック画報』などが相次いで廃刊になった背景は、言わ             ずもがなインターネット(音源のダウンローディング)             の普及やレコード会社の斜陽化と歩を一にしている。他
ならぬ僕自身も音楽雑誌や(ときに一般週刊誌)に記事
を書きまくっていたのは主に90年代のワン・ディケード            であり、以降は自分の単行本(これまでに計5冊)に軸
足を移していった。今はたまに再発CDなどでライナーノ
ーツの依頼がある時に執筆するくらいかな〜。

それにしても思う。音楽雑誌が読者の知的好奇心を刺激
する存在だった昔に比べると、昨今は随分広告主に気兼
ねした紙面作りが目立つようになってしまった。とある
同業者は「表4(裏表紙)に広告されているミュージシ
ャンがそのまま特集になっている。そんな露骨なタイア
ップにお金を払おうとする読者は少ないでしょうね」と
鋭く指摘する。またあるバンド関係者はとこう言い切る
「ウチのレーベルが広告を載せれば、今月に弊社所属の
ミュージシャンのインタヴュー記事を載せてもらえる!」

どちらも本当のこと。現実を知るにつれ”萎えていってし
まった”僕の気持ちを解って頂けるだろうか?またとくに
同業でない一般読者の方々でも年に何度もビートルズや
ストーンズの特集ばかりが組まれる現状にうんざりされて
いるのではないだろうか?そんな気持ちで心塞がれる時、
僕はまだ一般的には無名のバンドをライブハウスに聞き
にいく。心が解き放たれるのはいつもそんな時間だ。そ
のバンドは今夜も入念にサウンド・チェックをしている。
エンジニアとともに音響をチェックし、バンドマンは「
もう少しフロントのモニターを拾ってください」と言っ
ている。

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by obinborn | 2017-09-13 17:06 | one day i walk | Comments(0)  

スティーリー・ダン、再び

1973年に発売されたアルバムだが、まるで今日リリースされ
た新作のようにフレッシュな音楽だ。ベッカー=フェイゲン
が当時どこまで”未来まで残る”ことを意識していたかどうか
は知る由もない。ただ昨今のポピュラー音楽がジャンクフー
ドの如く消費されている現状を思えば、この生命力は奇跡に
も近い。スティーリー・ダンにとっては『CAN'T BUY A TH
RILL』に続く二作めであり、創設期のメンバーだったデニー
・ダイアスとジェフ”スカンク”バクスターのめくるめくギタ
ーが存分にフィーチャーされている。フェイゲンの「I.G.Y」
を予見させるBODHISATTVAの精緻なサウンド・デザイン、
「リキの電話番号」の前哨戦とも言うべきジャジーなRAZO
R BOY、ゲストに招かれたリック・デリンジャーが糸を引く
ように濃密なスライド・ギターで貢献したSHOW BIZ KIDS
など印象に残る演奏が多い。とくにMY OLD SCHOOLでの
スカンクのギター・ソロは圧巻であり、彼がドゥービーズに
移籍してから発表したマーヴィン・ゲイのDEPENDED ON
YOUでのプレイと同じくらいフレージングには閃めくアイ
ディアが満載されている。

もともとスティーリー・ダンはロック音楽の辺境から生まれ
てきたグループだった。いわゆるロック・バンドの汗くささ
やメッセージ性とは無縁。いや、むしろそうした態度と距離
を置くことで彼らはシニカルさや皮肉やユーモアを携えてい
ったのだった。いささかスタジオでの作業が細かすぎるとい
う弱点はあったものの、それも体育会系のノリに対する反発
と見ていけば彼らのラジカルさがよく解る。ベッカー=フェ
ィゲンのソングライティングにしても、僕は悲しいとか俺は
寂しいとかの自己吐露は殆ど見受けられない。その代わりに
ちょっと俯瞰してみる第三者的な視点がSHOW BIZ KIDSやM
Y OLD SCHOOLには活かされている。近年のボズ・スキャッ
グスが取り上げたPEARL OF THE QUARTERはどうだろうか
?僕はボズのヴァージョンでこのベッカー=フェイゲン作の
素晴らしさを改めて知ることになる。単純なラブソングには
求められない”四分の一の真珠”というメタファーが、聞き手
の心を捉え、夜明けに見る痛い夢のように想像力を刺激する。

まるで浮遊するような不可思議なメロディの置き方。ペンタ
トニックやブルーノートには決して回収されない独自のスケ
ール(何しろBODHISATTVAのエンディングに至っては東洋
的ですらある)それらのひとつひとつの価値、気まぐれな勝
算、生意気な盛りな青年時代の気取り、あるいは照れや恥と
いった秘めやかな感覚。私にとって73年の『COUNTDOWN
TO ECSTASY』はそのような音楽であり、出来ればそのこと
をずっと覚えておきたい。


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by obinborn | 2017-09-12 17:42 | one day i walk | Comments(0)  

スティーリー・ダン私感

スティーリー・ダンは初期の3枚くらいまでは熱心に聞いて
いたけれど、最高傑作と呼ばれる『エイジャ』辺りになると
ぼくとの距離はどんどん増していってしまった。それはバン
ド・サウンドを切り捨て、ベッカー=フェイゲンが強権体制
を敷き、プレイヤーを駒のように扱うことへの反発だったと
思う。この件に関しては「バンドにどこまで幻想を持つのか
の感覚の違い」と以前金澤さんから意見を頂いたことがある          けれど、実際スティーリーの音楽は以前の温かさやホノボノ
とした部分が希薄になり、バンドというより目的を遂行する
精緻なチームといった要素を強めていった。ただ彼らのこの
プロジェクト的な意識が従来の音楽に風穴を開けたことは認
めよう。今迄裏方だったスタジオ・ミュージシャンが表舞台
へと羽ばたいていくフュージョンの時代の先駆がベッカー=
フェイゲンに他ならなかった。ウォルター・ベッカーの訃報
を耳にして涙は出てこなかった。ただ『さわやか革命』が大
好きだった二十代の頃の自分を振り返ったら、ふと寂しくな
った。ベッカーさん、今までありがとうございました。

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by obinborn | 2017-09-04 19:10 | one day i walk | Comments(2)  

我が家に日本コロンビアのポータブル・プレイヤーがやってきた!

我が家に新たなポータブル・プレイヤーがやってきました!
日本コロンビアが80年代に制作したカセット/CD/カラオケ
用のマイクを同時に装備したもので、学校や公民館や温泉
旅館などに流通していたらしいです。オイラの目的は勿論
LPとシングルのモノラル再生!スピーカひとつのロウ=フ
ァイ音響なので、50〜60年代のブルーズ、ゴスペル、R&
B、アーリーR&Rなどの音楽と相性がピッタリなのです。
この中古品をわずか4,000円で販売してくださった民謡ク
ルセイダーズの水野さん、お手配ありがとうございます!
最初はまず絶対ジュニア・パーカーのデューク盤を聞くの
だと心に決めていました。次をスリム・ハーポのエクセロ
盤にして、今はロンサム・サンダウンを回しています。今
度はジミー・リードにしようかな!オイラの生活に新たな
オーディオ環境が備わりました(なおCD及びカセットが

現状機能しないのでこの値段になりました。通常の小売り

価格は6,000円です。あしからずご了承くださいませ)


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by obinborn | 2017-08-30 15:12 | one day i walk | Comments(0)  

再訪:ジェシ・ウィンチェスター『TALK MEMPHIS』

ルイジアナ州出身でメンフィスに育ったジェシ・ウィンチェ
スターにとって、メンフィスのロイヤル・スタジオで録音し
た『TALK MEMPHIS』(Bearsville 81年)は念願のアルバム
だったことでしょう。しかもウィリー・ミッチェルがプロデ
ューサーとしてセッションを見守ってくれたのですから。こ
の地でレコーディングした非ブラック圏アーティストとして
は加川良さんの作品がまず浮かんできますが、それと並ぶ傑
作だと思います。ジェシの盤は残念ながらホッジズ/ホッチズ
/ホッチズ/グライムスのスタジオAチームではなく、一般的に
はあまり知られていないコブ/フィッシャー/トールズ/ミッチ
ェルですが、Aチームに負けない豊潤なサウンドで貢献して
いるのがもう嬉しくって。

しかもこの記念碑の裏にはジェシが辿った個人史が横たわっ
ています。そう、皆さんご存知のようにベトナム・ウォーへ
の従軍を拒否した彼は、カナダのトロントへと亡命しおよそ
6年間の隠遁生活を余儀なくされました。そんなジェシが母
国アメリカに帰国出来たのは77年のことでした。ジミー・カ
ーター大統領が発令した"特赦”によるものだったのです。

この『TALK MEMPHIS』をそんな背景を思い浮かべながら
聞いていくと、何とも言えない感慨が湧いてきます。ジェシ
は何もとくに政治的な歌を作ってきたわけでは一切ありませ
んが、何でもない暮らしやありきたりの愛を歌う彼の歌から
時代のきしみのようなものがしっかり伝わってくるのです。
まるで夏草のように伸び伸びとした音楽。その瑞々しさ。
なお余計なお世話かもしれませんが、サブ・テキストとして
ティム・オブライエンの自伝的な著作『本当の戦争の話をし
よう』をぜひ。

残念ながらジェシ・ウィンチェスターはもうこの世にいませ
んが、米Rolling Stone誌は追悼記事で彼をこう讃えていまし
た「アンチ・ベトナム・ウォーに貢献した優れたソングライ
ターだった」と。

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by obinborn | 2017-08-16 19:38 | one day i walk | Comments(0)  

追悼:グレン・キャンベル〜あなたとジミー・ウェッブの友情のために

今朝ジミー・ウェッブの曲とグレン・キャンベルの歌は相性
がいいって書いたけど、漠然とした想いのようなものしかな
く心もとない。ただウェッブの歌詞にはフェニックスやアル
バカーキやウイッチタなど、アメリカ各地の土地名を記した
ものが多く、それらがグレンの夏雲のように大らかな歌唱と
マッチしたのかもしれない。

ウェッブは職業的なソングライターとして他人に曲を提供し
てきた人だけれども、ゴフィン=キングやリーバー=ストラ
ーあるいはマン=ウェイルやポーマス=シューマンのような
コンビではなく、自分一人で作詞と作曲を手掛けた点が決定
的に新しかったと思う。ゴフィン=キングらティン・パン・
アレイの世代よりも後の60年代半ばに頭角を現した時代性も
あるだろう。シンガー・ソングライターのブームを予言する
ように自身の最初のLPも68年に作っている。そのアルバム・
タイトルは『JIM WEBB SINGS JIM WEBB』これ以上ない
くらいに、ソングライターと歌との関係を言い当てたものだ
った。

しかもそれらの歌は無邪気なティーンエイジ・ポップではな
く、もう少し青年期の影絵を正確に捉えていた。グレン・キ
ャンベルが歌った「ガルベストーン」はどうだろう。ヴェト
ナム・ウォーに駆り出された兵士の主人公はこう歌い出して
いく「知らないヴェトナムの土地でぼくは今銃を磨いている
/故郷のガルベストーンが懐かしい/ぼくは恋人を置いてきて
しまった」

ガルベストンのgと銃のgが残酷なまでに韻を踏み、主人公
の苦悩を映し出す。しかしメロディはどこまでも美しく気品
に満ち、声高に反戦を唱えるようなフォークソングとはまっ
たく異なる”音楽性”に満ちている。そういえば以前ジミー・
ウェッブにインタヴューした時、ぼくは彼に「どんな反戦歌
よりも心に響きます」と「ガルベストーン」の歌に敬意を表
したのだった。そのウェッブとキャンベルとはいわば兄弟で
あり、仲のいいフレンズであり、ヴェトナム・ウォーという

時代をともにした戦友だった。

2017年の8月9日、陽が高く立ち昇る時間の只中にグレン・キ
ャンベルの訃報が届いた。その時ぼくが真っ先に思い起こし
たのが、ウェッブが作りキャンベルが歌った「ガルベストー
ン」だった。その曲は69年の3月、全米チャートの4位に輝
いた。アメリカじゅうの多くの声なき人々がその曲から悲し
みを聞き取り、言葉にならない何かを託した瞬間だった。


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by obinborn | 2017-08-09 16:23 | one day i walk | Comments(0)