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杉田代議士から覗く復古主義

LGBTのことを考えるといつも思い出すのは、ある会社の
事案である。たまたま私が勤めていた企業の得意先だった
ので知るところになったのだが、その得意先のある社員が
ゲイで、しかも女装して営業外勤したのが原因となり解雇
されたのだ。これは裁判にもなったのでひょっとして覚え
ている方がいらっしゃるかもしれないですね。大げさに言
えば人権と社会通念との戦いでもあったが、まあ自分の会
社にオカマちゃんが営業に来れば、大抵の人は善悪以前に
ただひたすら狼狽するだろうし、クビにした経営者の判断
に(その立場だったら余計)傾いたかもしれない。

今回の杉田水脈代議士の発言に関しては、日本の保守層に
根強く残っている「産めや増やせや」「男は働き女は家庭」
という通念を吐露したもので、驚くに値しない。70数年前
まで富国強兵のスローガンを掲げていた国の価値観がそう
簡単に変わるとは思えないからであるが、国が何らかの閉
塞に陥ると彼女のような復古主義が台頭してくるという点
は記憶に留めておきたい。


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by obinborn | 2018-07-30 07:15 | one day i walk | Comments(0)  

再訪:ボニー・レイット『ファースト』

吉村瞳ちゃんを構成する10枚なんていうのを勝手に妄想して
いるのだが、間違いなくボニー・レイットはエントリーされ
ることだろう。骨太なヴォーカルとスライド奏法そしてルー
ツ音楽への確かな眼差しという点で共通する。レイットは自
ら書いたライナーノーツにこう記している「ミネトンカ湖近
くの西ミネアポリスからおよそ30マイルほどのエンチャント
島で私たちは虚しいサマーキャンプを過ごしました。そこで
出来た音楽がここに収録されています。私たちはベーシック
な4トラックでのレコーディングを心がけました。そう、音
楽が持つ自発性とナチュラルな感情を失わないためにね。ミ
ュージシャンが個々の仕切り板に入り、彼らそれぞれのパー
トを完璧にオーバーダビングすることも出来たことでしょう。
でも私たちはその完璧という誘惑に音楽を生け贄として差し
出したくなかったのです」

今これを読み返せば、まだ20代前半だった小娘の背伸びした
感情や鼻っぱしの強さも感じる。しかし、一見青臭いこうし
た想いが、以降どれだけレイットの音楽を豊かに育んでいっ
たを思うと、彼女の審美眼の確かさに心打たれる。敬愛する
シッピー・ウォーレスの2曲、『RCAブルースの古典』で私
が知るところとなるトミー・ジョンソンの曲の生き生きとし
た解釈、ジャズ・スタンダードとなるバド・ジョンソン作の
Since I Fell For Youの瑞々しさ、あまり自作しないレイット
が珍しくソングライティングに取り組んだThank Youでの実
感など、21世紀から18年経った今なお、聞かれるべき71年の
記念碑がここに。ロバート・ジョンソンのデルタ古典Walking
Bluesのレイット版はどうだろう。そこに私は人々が泣き笑う
光景を受け止め、驚愕する。

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by obinborn | 2018-07-28 18:26 | blues with me | Comments(0)  

7月26日の吉村瞳

26日は吉村瞳のソロ・ライブを下北沢のラウンにて。
僕にとっては2回目の体験だったが、少しずつ彼女の
輪郭が見えてきたような気がする。繊細なフィンガー
・ピッキングからドローン効果を上げていく力強いコー
ド・ストロークそして息を飲まずにはいられないスラ
イド奏法まで、吉村は変幻自在にアクースティック・
ギターを繰り出す。抑揚の効いたヴォーカルもまた見
事なもので、オリジナルの楽曲に交えたザ・バンド、
ボビー・チャールズ、エリック・カズ、ロス・ロボス、
ジョージ・ハリソンらのナンバーが鮮烈に響き渡って
いく。アンコールではフレッド・マクダウェルのKok
omo Bluesまで飛び出すほどで、若い娘が切り取るア
メリカン・ルーツ音楽の数々に喝采を叫ばずにはいら
れなかった。あるお祭りの夜にふと耳にしたオールマ
ンズのRamblin'ManとJessicaがきっかけとなり、吉
村はギターを習い始めたという。その偶然に感謝せず
にはいられない。土曜には熱海でのギグが控えている。
台風を心配する彼女だったが、新しい土地と場所でき
っと吉村はまた歌を育んでいくことだろう。


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by obinborn | 2018-07-27 00:20 | blues with me | Comments(0)  

Just My Imagination

この一ヶ月で最も心に残ったのが、矢作史生さんの音楽論考
だった。彼はブルース・スプリングスティーンのBobby Jean
について、およそ以下のように考察する「青年期に於ける友情
と別れを主題にしたこの歌には実在のモデルが存在する。しか
し、この歌は聞く者一人一人にそれぞれのBobby Jeanを思い
起こさせる力を持っている」と。そう、まさに私たちにはかつ
て同じような服、同じような音楽、同じような映画を好んだ友
がいただろう。この歌はそうした多感な青年どおしが、時の流
れとともに離れ離れになっていく痛みを歌っている。互いが出
会った時の様々な光景を喚起させながら、最後のトドメが「さ
ようなら、ボビージーン」という激烈な歌詞であり、かつて私
も胸を抉られるような感動を覚えたものだ。

ところが、最近の音楽記事は逆に実在のモデル探しをし、それ
を知識の披瀝と言わんばかりに自慢する傾向にある。そうした
週刊誌的な種明かしが、どれほど聞き手のイマジネイションを
奪っていくかをジャーナリズムの人間はもっと考えた方がいい。
それは昔私がポール・ウィリアムスの音楽評論から学んだこと
とも重なる。ウィリアムスはディランのMr.Tamblinmanについ
て麻薬のディーラーであるだろう、といった詮索(犯人探し)
的だったかつての自分を恥じ、こう書き留める「僕はまるで
夜はいつも真っ暗だと信じていた子供のように愚かだった。
今僕はこの歌をあるがままに受け止める。そう、ここにあるの
はなだらかな自己放棄の感覚なのだ」と(『アウトロー・ブル
ース』より)

以前TAP OF POPSの記事が「ぼくの好きな先生」には実在する
人物がいることを種明かしていたが、忌野清志郎が生きていた
ら激怒したに違いない。あれほど慎重に特定のモデル探しから
距離を置き、言葉を選びながら書いた歌詞がこれでは台無しで
あ〜る。そう、R.Cサクセションの「ぼくの好きな先生」は、
"煙草と絵の具の匂い”のする学校の教室へと私たちを連れ戻し、
当時いただろうちょっと風変わりな先生を想像させる。イメージ
豊かに描いてみせる。歌のイマジネーションとはそういうものだ。私たちはそれぞれが想像するBobby Jean、Tamblinman、「ぼくの好きな先生」を信じている。

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by obinborn | 2018-07-26 16:59 | one day i walk | Comments(0)  

キャンディ・ステイトン『Stand By Your Man』

念願叶って本日キャンディ・ステイトンのfame原盤
『Stand By Your Man』(ST-4202)を購入しまし
た。かつて日本のvivid soundsが本作をリイシューし
た86年頃呆れるほど親しんだものですが、米オリジナ
ル盤はあまりにもプレミアムな高嶺の花でした。しか
し本日御茶ノ水のユニオンに行き、¥2,600でようやく
手を打ったのです。

時は69年。fameはこれまで提携関係にあったアトラン
ティックとの契約を打ち切り、新たにキャピトルを配給
先とします。規格番号がSDからSTに変化したのはそう
した事情からですが、アラバマ州ハンスヴィルに生まれ
れ、10代の頃からゴスペル・グループで歌っていたキャ
ンディがソロ・デビューしたのが、まさにこの時期でし
た。タミー・ウィネットのカントリー・ヒットStand By
Your Manを見事なサザン・ソウルに変換した力量にまず
驚かされますが、それはまだ序の口で、バラードのHow
Can I Put On The Flame(When You Keep The Fire
Burning)に移行するA2で、いきなりアルバムは頂点に
達します。この苦味に満ちたスロー曲でのキャンディの
純な歌いっぷり、手垢に塗れていない表現力に本物のデ
ィープ・ソウルを感じてなりません。他にもブルージー
なI'm Just A PrisonerやHe Called Me Baby、跳ねる
ビート感が可愛らしいToo Hurt To Cryなど、起伏豊か
にアルバムは進んでいきます。ところでキャンディはク
ラレンス・カーターの妻(のちに離婚)としても知られ
ていますが、例えばクラレンスの代表曲Slip Away風に
迫るMr.And Mrs.Untrueでは、クラレンス得意のオブ
リ奏法が聞こえるといった具合に興味は尽きません。そ
こら辺のことを突っ込んだインタビュー記事があればぜ
ひ教えて頂きたいものです。

ところで69年といえば、映画『黄金のメロディ〜マスル
・ショールズ』で描かれていたように、 フェイムの創始
者であるリック・ホールの独裁体制に嫌気が差したスワ
ンパーズ(ジョンソン=フッド=ホウキンズ=バケット
ら)が、新たにマスル・ショールズ・サウンド・スタジ
オを、シェフィールドにて立ち上げる時期と重なります
よね。そうした新たな門出に動ずることなく(実際は心
穏やかでなかったのでしょうが)徹頭徹尾フェイムなら
ではのビシッと締まったリズム隊(ロウ=ボイス=ブラ
ウン=アイヴィら)で固めた本作には、やはりリック・
ホールの意地が感じられてなりません。かつて筆者はそ
んなホールを「ひとつの時代しか生きられなかった男」
と書いたことがありますが、時代が激しく移り変わって
いった60年代の終盤に、リック・ホールの叡智とキャン
ディ・ステイトンのピュアな歌とが奇跡のように結晶し
た本作『Stand By Your Man』が生まれたことに感謝
したい気持ちでいっぱいです。

レーベルには誇らしくこう記されています。Recorded
At Fame Recording Studios 603 E.Avalon Ave.Mus
cle Shoals,Ala と。そしてProduced And Arranged
By Rick Hallと。


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by obinborn | 2018-07-21 18:30 | one day i walk | Comments(0)  

7月16日の東京ローカル・ホンク

簡素な言葉が音によって肉付けされ、懐かしい風景を
伴いながら広がっていく。そんな東京ローカル・ホン
クの3時間にも及ぶ16日のライブは圧巻だった。会場
の渋谷B.Y.Gには初めてと思われる若い人たちもちらほ
ら。世代を問わず、こうして広く間口を開けていると
ころがホンクらしい。聞こえない歌詞が一切ない。歌
が四季折々の表情や人々の喜怒哀楽とともに聞こえて
くる。そう、かつてザ・バンドやキンクスが描いた群
像劇のように。この夜久しぶりに選曲された「いつも
いっしょ」にしても、かえって聞き手にいつもいっしょ
にいられなくなった家族や親族、あるいは仲間のこと
を思い起こさせたほど。そう、天災によって200人以
上の死者を出した時期だけに、「いつもいっしょ」は
この夜特別な歌となった。


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by obinborn | 2018-07-17 00:29 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)